松原まこと7月1日読了時間: 3分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-4)ケム川の美しいリバーサイド・ビューを右側に眺めながら、馬車はトリニティー・ストリートを移動し始めた。トリニティー・カレッジ・エリア内に点在する聖メアリー教会、トリニティー・カレッジ付属図書館、同付属考古学博物館の前を抜けて、一行が今晩泊まることになっているユニバーシティー・...
松原まこと7月1日読了時間: 6分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-3)―――レザノフと善六は、うやうやしくトリニティ・カレッジのゲストルームに案内されるや、ロンドン育ちで歯切れのいいベンサム博士のキングズ・イングリッシュ第一声に見舞われる―― 「遠路ご無事で何より。海軍一の馬車とはいえ、いい加減尻も痛かろう。まあ、ここで一息入れてくれたまえ。...
松原まこと2023年7月6日読了時間: 4分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-2)―――ロイヤル・ネイビ―御用馬車は、海沿いの平坦な農村地帯を抜けて、いつしか起伏に富んだ湖沼地帯に差しかかった。山と水が織りなすその風景は、英国を代表する画家ウィリアム・ターナーが好んで題材にしたお気に入りの場所である。ちょうど前方に樫の老大木が、両腕を挙げて一行を出迎える...
松原まこと2023年3月29日読了時間: 7分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-1)一面深緑色の北大西洋の外洋に出た途端、ナジェジダ号の背後から突然の2発の轟音(ごうおん)に朝から叩き起こされた善六や津太夫ら5名は、期せずしてレザノフの船室に走った。迎え入れたレザノフ団長は、意外にも笑みさえ浮かべて両手を広げている。...
松原まこと2022年12月15日読了時間: 5分文化元年長崎梅ヶ崎事情 5夢のような僅か5日間の停泊だった。ヨーロッパ大陸北端ユトランド半島突端の東側ジュラン島のコペンハーゲン港―――遥かなる東洋の港ナガサキまで大航海の先を急ぐ大型帆船ナジェジダ号は、東からの順風をいっぱいに孕んで、1803年7月31日同港を出帆。コペンハーゲン湾を大きく旋回して...
松原まこと2022年11月11日読了時間: 4分文化元年長崎梅ヶ崎事情 4帝政ロシアの都ペテルブルグを流れるネワ河を小舟で下り、まもなくバルト海に臨むグロンシュタット港へ。フィンランドとの国境地帯で帝政ロシア有数の軍港グロンシュタットから一路西へ、順風満帆のバルト海航海もはや40日。大型帆船ナジェジダ号の視界前方にはデンマーク領ボーンホルム島の島...
松原まこと2020年7月23日読了時間: 8分あゝ スリーダイヤ巨大な1,000メーター・ドックを誇る長崎三菱造船香焼(こうやぎ)工場が、2020年5月人手に渡った。奇しくも昨年秋、三菱財閥創始135年の記念式典が東京・丸の内で模様された矢先のことだ。熟練技術者600名を擁した香焼工場の売却先は、数ある下請けの一つに過ぎなかった大島造船...
松原まこと2020年6月13日読了時間: 5分文化元年長崎梅ヶ崎事情3長崎を目指すロシア帆船ナジェジダがグロンシュタット港を出帆するその前日、皇帝アレキサンドルは津太夫ら一行を、ネワ河河畔で開催中のある見世物に招いている。皇帝が勧めるその出し物とは、果たして空前のスケールの“天空ショー”―――何と熱気球を、しかも“有人”で、天高く飛ばそうとい...
松原まこと2020年3月7日読了時間: 5分文化元年長崎梅ヶ崎事情2 仙台藩の廻船「若宮丸」の水主(かこ)たち15名は、太平洋上で船を失って極北の大地に馬橇(ばそり)上の客となり、ヤクーツクから氷結したバイカル湖面を滑り抜け、ロシア第3の都市イルクーツクに滞在する。津太夫ら漂流民のこの先の運命が、このイルクーツクで二つの方向に分かれて行くのを...
松原まこと2020年2月7日読了時間: 6分文化元年長崎梅ヶ崎事情1 あの出島が長崎湾に浮かぶ小さな「島」だった頃、また、その出島の東斜め対岸の梅ヶ崎(うめがさき=現在の梅香﨑)が湾内の「舟隠し」に適した小さな入江だった頃、長崎湾に一隻のロシア帆船が迷い込んだ。 文化元年(1804年)10月6日、徳川時代の陰暦で9月6日――奇しくも「くんち(...