松原まこと2023年7月6日4 分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-2)―――ロイヤル・ネイビ―御用馬車は、海沿いの平坦な農村地帯を抜けて、いつしか起伏に富んだ湖沼地帯に差しかかった。山と水が織りなすその風景は、英国を代表する画家ウィリアム・ターナーが好んで題材にしたお気に入りの場所である。ちょうど前方に樫の老大木が、両腕を挙げて一行を出迎える...
松原まこと2023年3月29日7 分文化元年長崎梅ヶ崎事情 6(英国縦断 その1-1)一面深緑色の北大西洋の外洋に出た途端、ナジェジダ号の背後から突然の2発の轟音(ごうおん)に朝から叩き起こされた善六や津太夫ら5名は、期せずしてレザノフの船室に走った。迎え入れたレザノフ団長は、意外にも笑みさえ浮かべて両手を広げている。...
松原まこと2022年12月15日5 分文化元年長崎梅ヶ崎事情 5夢のような僅か5日間の停泊だった。ヨーロッパ大陸北端ユトランド半島突端の東側ジュラン島のコペンハーゲン港―――遥かなる東洋の港ナガサキまで大航海の先を急ぐ大型帆船ナジェジダ号は、東からの順風をいっぱいに孕んで、1803年7月31日同港を出帆。コペンハーゲン湾を大きく旋回して...
松原まこと2022年11月11日4 分文化元年長崎梅ヶ崎事情 4帝政ロシアの都ペテルブルグを流れるネワ河を小舟で下り、まもなくバルト海に臨むグロンシュタット港へ。フィンランドとの国境地帯で帝政ロシア有数の軍港グロンシュタットから一路西へ、順風満帆のバルト海航海もはや40日。大型帆船ナジェジダ号の視界前方にはデンマーク領ボーンホルム島の島...